コロナ感染が流行してから、学会がオンデマンド開催されるものが増え、地方の開業医からすると、何日も休診にせず、好きな時間に教育講演やシンポジウムが視聴できるようになったことは本当にありがたく思っています。昨年の日本精神神経学会総会では、トラウマ関連の講演・シンポジウムが随分と増えたように感じました。やはりこれからの時代は、トラウマの時代になっていくんでしょうか。そこで紹介されていた図書を読みました。

エビデンスでわかる トラウマ・PTSD診療
amzn.asia
3,300円

読みたいと思った動機
著者の講演で紹介されていた。講演はとても整理されていて面白かった。トラウマ診療はこれからすごく重要視される分野なので、きちんと基礎を把握し、二次トラウマを与えないケアを提供したい。

得たい知識
トラウマの標準的対応はどのようなものか、一般診療でもできることがあるか、どのような心理教育が有効か。

あまり分厚くなくスーッと読み切れる本でした。一番励みになったのは、トラウマに対する専門治療を行えなくても、治療をしないよりは助けになることがたくさんあるということがエビデンスで示されていたことです。

ただ、予想通りと言いますか、トラウマに対する専門的治療は、研修を受けることが推奨されているものばかりでした。どこかで時間を作って研修に参加できるといいなと思います。

それでも、一般診療でもできることのヒントがたくさんありました。特に、著者の所属する大学のサイトに、診療で使える心理教育の資材などを無料でダウンロードできるよう提供してくださっているとのこと。実際にサイトを見てみますと、この本で紹介されている以外にもいろんな資材があり、患者さんに使用しても構わないとのこと(研究で使う場合は許可が必要とのこと)でした。

あと印象的だったのはアディクションの問題。アルコール依存や薬物依存の問題が、トラウマ関連診療では併存してよくみられるとのこと。アディクションは専門外でしたが、トラウマを中心に、いろんな精神医学的問題が繋がっていることが理解できました。

なぜトラウマ治療は敬遠されがちなのか、その理由を挙げられておられました。トラウマ診療は、専門家でなければ難しそうなイメージが強いんですよね。でもそれは、ある程度の基本的なことを知れば、我々精神科医がこれまでやってきた治療の延長上で十分対応できることがたくさんあるように感じました。