精神科医のつぶやき「昔はジェネリック医薬品を把握するのが大変でした|お薬の名前の付け方について」 (2025/05/26)
投稿者: furujinmachi
昔のジェネリック医薬品は、いろんなメーカーさんが好きな名前をつけていました。私は医者になってすぐ大学病院に勤務し、アルバイトで別の精神科病院にも週1回勤務していました。そうすると、同じ薬でも、病院によって採用しているメーカーが違うので、名前が違ったり、ということがよくありました。
例えば、抗精神病薬で有名な「セレネース」という薬がありましたが、これがアルバイト先では「リントン」という名前だったんですね。最初のうちは、何が何の薬なのか、覚えるのに苦労しました。カルテも、大学病院が電子カルテと紙カルテの運用が半々で、アルバイト先の病院は紙カルテでした。なのでパソコンが常時ある環境でもなく、スマホやタブレットもない時代でしたから、お薬の検索も簡単ではなかったですし。
実際、類似した名前の製品の取り違えによる医療ミスを起こすリスクもあったりで、2005年にジェネリック医薬品の名前は「成分名+会社名/屋号」に統一されるようになりました。
お薬は、開発された時に、成分名がつき、そのお薬が実際販売されるときに、お薬の商品名というのが別につくんですね。例えば、とてもよく使われる抗うつ薬で「レクサプロ」という薬がありますが、これは商品名で、この薬の一般名(成分名)は「エスシタロプラム」になります。この薬は2022年にジェネリック医薬品が販売されたので、ジェネリック医薬品は全て『エスシタロプラム「〇〇(会社名/屋号)」』という形になります。
しかし、このカタカナの名前、なかなか覚えられないですよね。私は商売道具なので、自分がよく使う精神科の薬はさすがに覚えていますが、患者さんは自分の飲んでいる薬の名前を把握するのは大変ではないかと思います。
よく患者さんが「アメルの薬」とおっしゃったりすることがあるんですね。「アメル」というのは、共和薬品工業株式会社が製造するジェネリック医薬品に使う、いわゆる「屋号」というものになるので、アメルというのは、作っている会社目に該当します。なので、それがフルニトラゼパム「アメル」かもしれないし、エスタゾラム「アメル」かもしれないし、ゾルピデム「アメル」かもしれないし。アメルではなく、その前の名前が大事なんですが、なんとなく「アメル」の方が覚えやすくてそっちを覚えてしまうんでしょうね。アメルだとたくさんあって分からないんです。
最近はお薬手帳を持参される方が増えましたから、お薬手帳で確認できるので助かります。
ともあれ、ジェネリック医薬品の名前のつけ方が統一されたことで、新たな薬の名前を覚える必要が減り、正直助かりました。その薬の商品名と一般名さえ覚えておけば、ジェネリック医薬品が出ても、どの先発薬に対するジェネリック医薬品なのかの把握がしやすくなりました。
しかし、お薬はどんどん新しいものが出てきます。最近では、睡眠薬の開発が増えてきていますね。新しいお薬を覚えて把握するのは大変ですが、より安全で使いやすい薬が増えてくれるのは大歓迎です。頑張って、新しい薬も使いこなせるようになっていきたいと思います。