精神科医のつぶやき「カウンセリングのイメージを誤解されていませんか?|カウンセリングは筋トレと思っていただきたい」 (2025/05/16)
投稿者: furujinmachi
先日来られた患者さんの話ですが、現在お仕事を休職されており、復職するに当たって、カウンセリングを受けて、自分の問題点をきちんと解消してから復職して下さい、と言われたとのことでした。
これまで3回ほど休職をされたことがあるため、これ以上休職しないで良いように、対策を立ててきて欲しいとのこと。
同じような話は他の方からも聞きます。完全に治して、問題なくフルタイムで働けて、再発しないようになったら復帰して欲しいとか。でもそれって過剰要求ですよね。風邪が治って仕事復帰するのに、2度と風邪を引かないようになってから復帰してくれって言ってるのと同じくらい、厳しい話だと思います。
ちなみに、一般的に要求される復職基準について、以下の記事でも紹介してますので参考にしていただければ。
ただ、確かに再発予防対策は重要です。しかし、冒頭に紹介した方のようなケースで少し気になるのは、世間一般の人がカウンセリングにどのようなイメージを抱いているのか、というところです。
数回、カウンセラーと話をしたら、再発予防対策が出来るような気づきがしっかり得られて、その人のメンタルに定着する、みたいに思われているのでしょうか?
カウンセリングの重要度が認識されて、カウンセリングを希望される方が増えてくるのはとてもありがたいのですが、どうも提供する我々と、希望される患者さんやご家族、会社の認識がすごくずれていると感じることが多々あります。
こちらの記事にも書きましたが↓
カウンセリングのイメージは筋トレです。コツコツ継続的にしていると必ず成果は出ますが、短期的にすぐ成果を得ようとするとかなり難しいです。
ですから、例えば3ヶ月間休職が出来るとして、その3ヶ月間でカウンセリングをして、しっかり再発予防対策をしてから復職して欲しい、というのは、3ヶ月間で腹筋を鍛えて腹筋を6つに割って欲しい、みたいな要望と近いと思ってます。はっきり言って無理です。
実際には、カウンセリングでも、話し合う内容を絞って短期間で成果を上げるようなプログラムもあります。これからは、そういうプログラムが人気が出るかもしれませんね。今人気の認知行動療法は、効果を高めるためにかなりプログラム化されたものもあります。ただ、実際は、プログラムをこなせばいいというほどの簡単なものではなく、カウンセリングを実施する人の力量だったり、受ける患者さんのモチベーションだったりもすごく大事になってくるようです。短期間で腹筋を6つに割るのも、めちゃくちゃ頑張れば、出来るかもしれない?みたいな感じでしょうか。
あとは、マンパワーの問題もあって、当院は今心理師が1人なので、頻繁にカウンセリングを受けたいと言われても、予約枠的に難しいという物理的な問題もあります。そうなると、リワークデイケアのように、集団で行う認知行動療法プログラムが一番効率的、ということになります。
(当院のリワークデイケアについての紹介も良かったらご覧下さい)。
カウンセリング、という言葉が一人歩きしないよう、カウンセリングの実態的なものが、筋トレのイメージくらい一般的に広まるようになって欲しいと感じます。