「お薬の飲み忘れってありますよね。精神科医は原因別に対策を考えてます|こころの不調に気づく その4」 (2025/05/16)
投稿者: furujinmachi
精神科にかかり出した患者さんのフォローとして、薬剤師さんにしていただいて助かるのは残薬チェックです。患者さんがこれまで処方された薬を、どれくらい飲み残していらっしゃるか。それはすなわち、患者さんが、医療機関から処方されたお薬を、どれくらい指示通り内服されているかの指標になります。
お薬は、きちんと飲んでいることを前提に効果が期待されます。お薬を飲んでいるのに、思ったより効果が出ないな、というときに、お薬の内服状況が良くない場合という可能性が出てきます。それに気づかず、お薬が効いてないなら量を増やしましょう、種類を増やしましょう、ということになると、処方される薬がどんどん増えてしまう、ということになってしまいます。
そこで、実は患者さんがあまりお薬を飲んでおらず、結果として残薬が多いということがわかると、対応が変わってきます。患者さんは、お薬を飲んでいないということを医者に伝えた時に、医者がどのような反応をするかを心配して、医療機関には正直に言わない事があります。でも、薬局で確認されると、「実はまだお薬が1週間分残っている」とか、「今回はいらないくらい残っている」とか、そういったお話をしていただけることがあるようです。
なので、薬局から「この薬は残薬がこれだけあるので処方をこれだけ減らして欲しいとのことですが」といった連絡があると、「おや、患者さんはお薬をきちんと飲んでいないんだな」ということに気づけます。
お薬は、だいたい目安として、9割程度内服していただけていたら、効果は期待できます。ですので、2週間ごとにくる患者さんが、1、2回程度の飲み忘れをしている程度は大丈夫ということになります。人間ですから、うっかり忘れることはあります。
しかし、それ以上に飲み残しがある場合は、どうするか検討する必要があります。
まず、そもそもその薬を内服する必要があるかどうかを検討します。例えば睡眠薬を処方していて、その飲み残しが多い場合。患者さんがすでに薬を飲まずとも眠れるようになっているなら、お薬を減らす、やめるという選択肢が出てきますよね。
でも、できればもうしばらく、しっかりお薬を飲んでいただきたい場合だと、どうするか。まず、なぜお薬を定期的に飲めていないのか、その理由を把握する必要があります。単純にうっかり忘れてしまう場合や、定期的に内服しなければならないのを知らずに、調子の悪い時だけ飲めばいいと思っていた場合、飲んだ方がいいのは分かっているが、面倒で飲まずに寝てしまう場合だったり、内服した時の副作用がしんどくて、ついつい飲み飛ばしてしまう場合など、色々な理由があります。その理由に応じて、対策を立てていく必要があります。
・単純な飲み忘れ→飲み忘れない工夫を一緒に考える
・定期内服だと知らなかった→継続内服で効果が出ることを説明
・内服が面倒→内服回数や処方薬の数を減らす、注射などに切り替える
・副作用が気になる→副作用対策をする、薬を変更する などなど
また、さまざまな理由で、薬をやめたいとなった時に、自己判断で中断することは患者さんに負担をかける場合があります。前回の記事に書きました、離脱症状が出るからです。ですから、お薬をやめたい場合も、主治医に相談するよう伝えていただきたいのです。
精神科のお薬に慣れていない薬剤師さんでしょうか、患者さんに対して「こんなにお薬が出てるんですね」といったお話をされる方がいらっしゃるようです。そのように言われると、患者さんは不安になり、「お薬をやめた方がいいのだろうか」と考えて、自己中断に至る場合があるようです。患者さんもお薬を飲むことに不安を感じながら、治療を継続されています。「お薬を頑張って内服されているのですね、何か不安な点はありませんか?」といったように、患者さんが安心できるような声かけいただけるとありがたいなと思います。
実際の講演では事例を提示しながら話してみようと思います。