精神科医のつぶやき「「こんなことで病院に来ていいかどうか迷いました」と言われたら、精神科医はどう感じているか|精神科受診に関する悩み」 (2025/05/16)
投稿者: furujinmachi
「こんなことで病院に来ていいのかどうか迷いました」と、初診の時におっしゃる患者さんがいます。これって、精神科や心療内科に独特の話なのでしょうか?
自分のことに置き換えて考えてみると、例えば歯医者さんとかは、歯が痛くなくても、定期健診でも行きます。私は割と虫歯になりやすい方なので、かかりつけの歯科医院から、定期健診の案内が来たら、診てもらいに行ってます。虫歯が出来てても、自覚症状がないうちに治療してもらえた方が、治療も大事にならないし、こちらも楽です。
あと、年に1回、内科検診も行っています。長く元気で働くためには、メンテナンスは大事ですよね。
精神科・心療内科に関しては、メンタル不調を経験した人が、維持療法として、定期的に通院を継続される方はもちろんいらっしゃいます。しかし、メンタル不調を経験していない人が、予防的に受診する、というパターンは経験したことがないです。冒頭のようにおっしゃるような方でも、何か困りごとが出来たから、病院に来ているので。
ただ、病院に来られて、色々とお話を聞いて、お薬を少しお出ししておきましょうか、次回はいついつ来て下さい、といった話をさせてもらった後に、「先生、私は病気ではありませんよね」とおっしゃる方がいます。私の頭の中は「?」ってなってしまうのですが。いや、病気だからお薬を出すんですけど…病気じゃないなら薬なんかいらないですよね?みたいな。
でもこれって、「精神科の病気」に対するイメージの問題がありますよね。精神科の病気になると、もう治らない、社会復帰できない、みたいな。
精神科の病気でも、内科の病気と同じで、病気の種類も重症度も人それぞれです。放置していたら悪化するところを、早めに来てくれて、悪化せずに改善することもあります。精神科の病気の多くが、内科の病気と同じように、治療を早く始めた方が早く回復するのです。ですから、メンタルの不調を感じたら、早めに病院に来てくれた方が、本来はいいと思うんですよね。
実際、「これって病気かな?自分の怠けかな?」って悩むレベルになっているときは、たいてい病気になっています。病院に来られて、お話を聞かせていただいて、それで、「それはあなたの怠けですね」ってなるケースはほとんどありません。
でも、「自分の怠け」と言われるのは辛い方もいるし、病気と言われるのが怖い方もいる。そうなってくると、それは「精神科の病気」に対する誤解の部分があるのかなと思います。
精神科の病気の方でも、確かになかなか改善せず、長く通院していただいて、長くお薬を試していただく方もいます。でも、お薬を飲みながらでも日常生活を支障なく過ごしておられる方もいます。また、短期間の治療で改善し、通院をやめる方もいます。そのあたりは、内科の病気と同じで、風邪だったり、糖尿病だったり、癌だったりで、重症度も通院期間も全然違ってくると思うんですよね。
なので、精神科に来られて、お薬が出たときには、いわゆるこころの風邪くらいにはなっていると思います。でも、それをどう伝えるかは、相手の受け止め方に応じて工夫する必要があるのだろうなと思ってます。しっかり病名として伝えてもらった方が納得できる人もいるでしょうし、はっきり病名を言われるとショックを受けて余計辛くなる人もいるでしょうし。何度か通院いただき、通院することになれてこられた頃にお伝えする方が負担が少ない場合もあると思います。
冒頭の話に戻ると、個人的には、あまり我慢せずに、「なんだか調子が良くないな」と感じたら、病院受診を検討してもらえると良いのではないかと思っています。