親子、夫婦などご家族内でメンタル不調者が複数人いらっしゃって、診療所にかかることもあると思います。
最初のうちは、患者さんのご家族を新たに担当して診察することはお断りしてたんですよね。
というのも、主治医は患者さんの味方でいるべき、というスタンスでいましたので、家庭内で何かストレスを抱えている場合に、どちらの味方をしたらいいか分からない事態を避けたかったんですよね。なのでそのリスクを避けるために、すでに通院されている方のご家族はみない、というルールにしていました。

今でも、明らかに大きな問題を抱えている家族同士はみないことにしています。例えば、現在すでに離婚協議中の夫婦をお二人とも患者として担当する、という事態は避けてます。ときどき、そのような状況下で、配偶者を診て欲しいと依頼されることってあるんですよね。でも実際のところそれって難しい。配偶者の方にもし精神科治療が必要なのであれば、その方の味方をしてくれる主治医にかかった方が良いと思うんですよ。私はどうしても、すでに通院されている患者さんの味方になってしまうので。

しかし、そこまで揉めていない、いわゆる普通の関係性のご家族までお断りするのは過剰防衛かな、と考えるようになりました。自分が信頼している医者に、自分の家族を診て欲しいと思うのは、ごくまっとうな願望だと思います。

ただ、お互いの診察内容は私からは話さないということとし、できるだけ家族が来ていることを意識せず、その人一人を診ている感覚で診察に当たるようにしておりました。そしてそのことを了承してもらって、対応しておりました。実際はそれもなかなか難しいところがあって、どうしても、「お母さんはこの前ああおっしゃってたなあ」とか「お姉ちゃんはこの前こんなこと話してたなあ」とかを思い出しながら診察することもあります。ある意味、患者さんの話だけを聞いてあげたいのに、バイアスがかかってしまうというか、先入観が入ってしまうというか。そういうのも避けたかったので、最初は断ってたわけなのですが。

でも、最近スキーマ療法という治療法のプログラムを視聴して、「家族を家族として診る」という視点をもっと意識するようになってきました。家族みんなを支援することが、結果それぞれ個人を支援することにつながる。誰にとってもプラスになるような、そんな支援が出来れば、双方へのメリットになる、という考え方ですね。喧嘩の仲裁に入るにしても、どちらが正しくてどちらが悪い、という解決ではなくて、双方が納得する、あるいは双方が折り合いがつくところが見つけられるといいし、そもそも仲裁するのではなく、どちらの気持ちもくみ取り共感することは可能なのかなと思います。

これは、具体的に何をするということでは無くて、治療をする私自身のスタンスの問題というか。この「家族全体」にとって、何の支援が望ましいのだろうか?という視点を意識したいと思っています。

しかし、ご家族の状況によっては、やはり個別性を重要視した方が良い場合もあると思います。ご家族を診させてもらえるかどうか、状況を確認ししっかり見定めていきたいと思います。