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06 June 2025 の投稿一覧です。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

さて、コツコツと作っている講演会の資料です。


リワークデイケアとは何か

そもそもの、リワークデイケアの定義についてです。
リワークデイケアとは、メンタルヘルス不調によって休職している方が、職場復帰に向けて「仕事をする力」を取り戻すための専門的なリハビリテーションプログラムです。精神科の外来治療の一環として、多くの場合は週に数回、日中の時間帯に通所する形式で行われます。

リワークデイケアの目的は、単なる「症状改善」ではありません。休職中の方が「よくなったからすぐ職場復帰」できるとは限りません。うつ病や不安障害などでは、症状が落ち着いた後も、集中力・持久力・対人関係のスキルなどが低下していることがよくみられます。そのため、以下のような「働き続ける力の回復と定着」が、リワークデイケアの目的になります。

・安定した生活リズムの再構築
・認知機能やストレス耐性の向上
・対人関係や社会的スキルのトレーニング
・自己理解と再発予防の強化
・会社との復職調整と職場定着支援

そして、意図としては、安全で持続可能な復職を実現することになります。「とにかく早く職場に戻す」ことを目指すのではなく、復職後に再発しない形で安定して働き続けることをサポートするのが本来の意図です。

リワークデイケアの実施時期について、つまり、どの段階で参加するのか?という点について。「症状の急性期を脱し、体調が安定してきた回復期」に実施するのが理想です。具体的には次のような時期です。

・主治医が「そろそろ社会的活動のリハビリが必要」と判断したタイミング
・本人が「そろそろ働きたい」と感じ始めた時期
・日常生活はある程度こなせるが、まだすぐに職場復帰する自信がない段階

当院でのリワークデイケアの実際
興味のある方、ぜひこちらの記事を読んでいただけたら。


とりあえず講演で話す内容としては、
・ うつ病、躁うつ病、不安障害のために休職している人が対象
・リハビリテーションプログラムによる集団による治療
・週3日(月、水、金)初級入門プログラム(11時15分~12時15分)と上級応用プログラム(9時~10時45分)
・ 期間は3カ月(初級1ヶ月、上級2ヶ月)
・病状が比較的安定してきた段階から働ける段階へ復職準備を高めるもの(復職準備性)

初級プログラム
・ 活動記録表
・認知行動療法(睡眠)
・心理教育
・日記ノート

上級プログラム
・ 活動記録表
・マインドフルネス
・アサーショントレーニング
・認知行動療法(認知再構成法、問題解決技法)
・心理教育(再発予防のリハビリテーション、復職に向けての心得)
・ライフキャリアバランスについての見つめ直し
・復職に向けた過程の整理
・日記ノート

これまでの実績です。
・令和2年7月より開始
・令和6年末で20回目のグループが終了、99名が参加
・1回のグループの参加人数:3人〜14人、平均6.1人
・1人の参加回数:最大4回、平均1.45回

参加者の感想です。
・最初は緊張してしんどかった。体力が落ちていることを実感した。
・他の人の発言を聞いて、悩んでいるのは自分だけではないとわかりホッとした。
・マインドフルネスを知ってリラックス出来るようになってきた。
・自分が悪いと自分のことばかり責めていたが、職場の方にも問題があったのではと気づいた。
・メンバーとコミュニケーションを取ることで、復職に向けての自信が少しついてきた。
・自分の病気や薬について知ることが出来た。

リワークデイケアの認知度を、講演会で上げていきたいと思います。
カテゴリー: 総合
投稿者: furujinmachi

本棚に並べてあった順番なので読み出したんですが、これがすごく面白かったです。この本をいつ買ったのか、なぜ買ったのかがあまり思い出せないんですが、こんないい本を持ってたなんて、と驚きました。スタッフにも頑張って読んでみてほしいと思っています。

システマティック臨床精神医学 4つの多元的観点による治療体系化
amzn.asia
2,970円


読みたいと思った動機
おそらく、先日読んだ「精神科診断に代わるアプローチPTMF」に紹介されていたのか、それか、何かの雑誌で紹介されていたのか、興味をひいて購入したものと思われる。
あ、ちょっと思い出したような。確か、スタッフに精神医学について説明できたらと思い、精神医学の復習をしたいと思ったのと、何か新しい見解が得られそうだなと思って興味を持って購入したような記憶がある。

得たい知識
精神医学は今どんな状況になっているのか?
副題にある「4つの多元的観点」とは何か?
何か今の診療に活かせそうな内容はあるか?

いつものように速読でささーっと読もうと思ったのですが、症例ベースの本で、面白くてついしっかり読んでしまいました。

4つの多元的観点とは、「疾患」「特質」「行動」「生活史」です。

「疾患」:患者が has=「持っている」
臨床症候群→病理学的過程→病因
目標:サポートし薬剤で治療する
一番私たち臨床家に馴染みのある観点ですね。今の患者の症状を把握し、そこから病気、病因を考える観点です。

「特質」:患者が is=「である」
潜在因子→誘発因子→反応
目標:導く
患者さんのパーソナリティだったり、知能や発達特性などに当たります。その人が元々持っている特質に、何か誘発因子が加わって、今回の反応を起こしているという観点です。

「行動」:患者が does=「する」
生理学的衝動、条件づけ学習、選択の3つの要素が互いに影響する
目標:介入する
その人が起こした行動は、その人の衝動と、これまでの経験(学習)から選択されている、という観点です。その人のこれまでの生い立ちや経験から、そのような行動を起こした、という部分を理解する指標です。

「生活史」:患者が encounters=「遭遇する」
場→順序→転帰
目標:修正する
患者さんが何に遭遇し、それにどのような影響を受けたのかを知る観点です。ライフイベントによって精神症状が引き起こされたことを理解することに役立ちます。

4つの観点からのアプローチから、治療者は治療目標を考え、どのような治療を施行するかを決めます。確実に効果のある治療を行うためのアプローチとも言えます。

8人の症例を、この4つの観点からのアプローチで解説されており、また、医師がどのような声掛けで情報を収集しているか、そのやりとりも載せてくれているため、具体的な診察場面がイメージできるような内容です。とても勉強になりました。患者さんを見る視点、判断する観点を磨いていきたいです。