精神科医のつぶやき「存在感の薄い医者を目指す気にはどうしてもなれない (2025/04/25)
投稿者: furujinmachi
記事を書いてから、画像を検索させてもらったら私の気分にピッタリの画像があってちょっと嬉しくなりました。ちなみに私は白衣は着てません。あれ肩凝るんですよね。なので嫌いなんですよ。
先日、辛かった症状が改善し、通院を終了された患者さんがいました。今日で通院は一旦終わりにしましょう、という話になって、「先生のおかげで助かりました、ありがとうございました」と深々とお礼を言われました。正直とても嬉しかったです。
私がまだ医者になりたての頃に読んだ心理学の本には、カウンセラーはできるだけ存在感が薄い方が良いというようなことが書いてありました。クライエントが自分で良くなったと思えるように、「一体カウンセラーは何をしてくれたんだろう?」と思われるくらいがいいんだと。そしてカウンセリングが終わったら、忘れられるくらいの方がいいのだと。なるほど、自己肯定感を高める上でも、「自分で治った」と思ってもらえるくらいがいいんだなと、当時の私は妙に納得しました。
当時の私は、「なんとか自分がこの人を治さないと!」と、目の前の人をすごく抱え込む傾向があったように思います。ある意味、余裕がなかったというか、力みがすごかったというか。そうではなくて、患者さんのことを信頼し、「この人は自分で治る力がある」「私はそのお手伝いをする立場だ」というスタンスは大事だなと思います。
しかしそれでも、存在感の薄い医者を目指す気にはどうしてもなれないんですよね。忘れられるのも寂しい。通院を卒業されることは本当に喜ばしいと思います。でも、困ったらまた思い出して、頼ってきて欲しい。
患者さんにはよく「火傷」の話をします。今回、熱いヤカンに触ってしまって火傷になってしまった。適応障害のように、何か原因があって「うつ状態」になったっていうのはそういうことです。お薬を飲んで、休養して、火傷をまずしっかり治しました。でも、また熱いヤカンに触っちゃうと火傷しちゃうんです。どんなに熱いヤカンに触っても、火傷しないように治療するのは無理です。熱いヤカンに触らないように、気をつけていただきたい。でも、うっかりまた熱いヤカンに触っちゃったら、火傷がひどくならないうちに治療に来て欲しい。
患者さんがこころの火傷になった時に、「あ、そうだあそこにいこう」と思い出してもらえる存在になりたいなあと思う今日この頃です。