睡眠時無呼吸(いびき)外来
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
近年、SASが関連する居眠り運転(表1.)が原因の交通事故がマスコミ等で多く取り上げられています。
SASとはSleep Apnea Syndromeの略語で、睡眠時無呼吸症候群のことです。
睡眠中の10秒以上の呼吸停止を無呼吸とし、一晩に合計30回以上また1時間当たり平均5回以上の無呼吸を繰り返す状態を指します。
中等度以上のSAS患者さんの場合、交通事故を起こす危険性は健常人の7倍になり、特に重症SAS患者で有意に事故率が高いことが報告(表2.)されています。
どんな症状が出るのか?
SASの患者数は?生活習慣病(成人病)との関連があるって本当?
男女比2~3:1。国内での潜在患者は約200万人、治療が必要な患者さんは約30万人と言われています。
30~60代のちょうど働き盛りの年代は要注意。
生活習慣病(成人病)や肥満と密接に関係(表3.)しています。
睡眠中に呼吸が止まると、体全体が酸欠状態となり心臓は起きている時以上に拍動するため、血圧も脈拍も上がります。⇒高血圧症は健常人の2倍、特に治療中にもかかわらず血圧が下がらない薬剤抵抗性高血圧症は80%合併するとの報告があります。
(Logan et al. J.HyperTension 2001)
治療せずそのまま放置していると、どうなる?
246名の無治療の患者をAI(Apnea Index:1時間あたりの無呼吸回数)20以下の群(142例)とAI20以上の群(104例)に分けた累積生存率では、8年後の生存率がAI20回以上の群で63%まで低下したとの報告があります。(表4.)
1時間あたり20回以上呼吸が止まる患者さんは、精査⇒治療の必要があるのです。
スクリーニング検査から診断・治療までの流れ
①「いびき」や「呼吸停止」をご家族から指摘されたり、日中の強い眠気等上記症状がみられる場合は、当クリニックを受診いただき(ホームページ上で初診予約も出来ます。)、スクリーニング検査の段取りをします。(呼吸機器取り扱い担当業者と直接連絡を取り合っていただき、希望日にご自宅へ宅配便で検査機器が届きます。)
②検査はご自宅で一晩右図のような検査機器を取り付けて就寝していただくだけの簡易なものです。(装着方法がお分かりにならなければ、担当業者がご説明にうかがいます。)
翌朝、検査機器は宅配業者がご自宅まで回収に来てくれます。
③1週間から10日ほどで当クリニックに検査結果報告書が届きますので、再診いただきご説明致します。
問題なければ6ヵ月後に再検査、精密検査が必要となれば三次地区医療センターへ検査入院(1泊)、重症であれば早速ご自宅での治療が開始となります。(同呼吸機器取り扱い業者より治療機器が届けられます。)
④治療は、ご自宅で右写真のような呼吸器を取り付けて就寝いただくものです。
無呼吸を呼吸器が検知し強制的に肺に空気を送り込む事で呼吸を維持し、低酸素状態を回避します。在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)と呼ばれています。持ち運びも可能で、出張や旅行先でも使用できます。
治療開始後、劇的に諸症状の改善がみられる方々が多く、当クリニックでの治療中断者はおられません。
SASの早期診断を会社始動で!!
最近では、SASに伴う事故は当事者のみならず【会社側の管理不行き届きによるもの】として管理責任を問われる可能性も出てきています。
平成28年8月、国土交通省にて10年ぶりに「自動車運送業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル~ SAS対策の必要性と活用~」が改定されました。この中では、管理者がSASスクリーニング検査を積極的に実施するよう促しています。
旅客運輸・貨物運輸・郵便輸送業の管理者の皆様方には、従業員の皆様が安心して 運転業務につけるよう、会社始動での健康管理をお勧めしています。