最近、マスコミなどでも新型インフルエンザの話題がよく取りざたされていますが、われわれ医師の間でも、この問題のさまざまな側面がかなりシリアスに話し合われています。
数年前のSARSの時のように、「大騒ぎはしたもののたいしたことなかったな」ってことになればとてもよいのですが、今回の新型インフルエンザの場合には、専門家の間でも少なくともここ10年以内には発生するだろうとの見方が強いようです。ひょっとしたら今シーズンかも知れない…。
個人としてできる対策は限られています。しっかり食べてしっかり寝て体力、免疫力をしっかり保っておく、うがい、手洗いなどの基本的な感染予防法をきちんと実践する、などでしょうか?

実際に感染者が発生した場合、感染の拡大を防ぐためには鳥でウイルスが発見された時と同様に地域の封鎖が最も有効ですが、これには当然政治的な判断が必要です。感染が拡大していわゆる「パンデミック」状態となれば、この状態が一段落するまで最低2週間程度は外出することも困難な状況が予想されますので、食料などの生活必需品や医薬品の備蓄が必要となるかも知れません。これらも,特に医薬品やプレパンデミックワクチンと呼ばれる新型インフルエンザ用のワクチンなどに関しては、個人や一医療機関でできることではなく、やはり政治的な取り組みが不可欠です。

要するに、新型インフルエンザ問題は医療問題、健康問題というより危機管理問題であり、国家レベルで対策を講じる必要があるのです。しかし、昨今の政治状況を見ていると、残念ながらあまり期待はできそうもありませんね。今のわが国の政府には何もできなさそうに思えます。「定額給付金」という天下の愚策(あれはもはや政治とも政策とも呼べない代物だと私は思います)ですら、最後までやりきることができずに地方に丸投げしちゃいましたものね。

この状況で、世界同時不況に新型インフルエンザが追い打ちをかけるようなことになれば…。あまり想像したくないですね。そんなわけで極めて非科学的な態度で申し訳ないのですが、新型インフルエンザにはせめてもうしばらくお待ちいただきたいと願わずにはいられません。できれば、そのままお引き取りいただけるとありがたいのですが…。