世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
という、有名な在原業平の歌があります。
 世の中に全く桜が無くなったなら、春はのどかな気持ちで過ごせるのに
というような意味だと思います。
この歌の事は国語の授業で知ったと思うのですが、「人はそれぞれだなあ」と思わざるを得ない歌です。
自分は桜を見て、暖かい風を感じて、ああのどかだなあと感じるわけで、のどけからましとは逆の状態になるわけです。在原業平と私の桜に対する感じ方は全く逆なのです。
私にとって、人はそれぞれだなあと実感することは大切なことです。患者様は私とは別の人なので、自分とは違う考え方感じ方をするのだという当たり前のことは、意外と普段は意識していないので「普通こうじゃないの?」とか「私だったらそんなことはしない」とか、他人を自分の枠にあてはめて批判的に考えてしまいがちなのです。つまり、自分の枠に他人を当てはめて考えてしまうわけです。それは、まずいことです。
「自分の枠にあてはめずに人の話を聴くといいよ」ということは私がオリジナルで言っているわけではなく、ロジャーズという心理学者の方が言っておられたことです。
人を自分の枠にあてはめないということは、人を受け容れるということです。
ある人が良い方向で心の成長をするためには、受け容れられた状態で話を聴いてもらうのが良い。そのためには、聴く側は自分の枠にあてはめるような聴き方ではいかんよ!と教えてくれているのです。だから、人それぞれということは、私にとって大事なのです。
在原業平の歌はそれを実感させてくれる重要な歌ともいえるわけです(私にとっては)。
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